世界の子育て・教育をのぞいてみよう! 第5回|フィンランド・フランス・スペイン・日本編

春になると、あちこちで見かけるピカピカのランドセル。

「もうすぐ一年生だね!」

うれしさと、ちょっぴりの緊張。

日本では、小学校の入学といえば、桜の季節を思い浮かべます。

では、もしこの子がフィンランドで生まれていたら?

同じ年齢でも、まだ小学校一年生ではないかもしれません。

一方、フランスでは、3歳から「教育を受ける義務」があります。

「えっ、そんなに違うの?」

気になりますよね。

でも、入学年齢の数字だけを比べると、大切なものを見落とすことがあります。

今日は、ヨーロッパの教育制度を調べながら、「学び始める」とは何かを考えてみます。

学校用品を準備する親子のイメージ
学校用品を準備する親子のイメージ(記事内容をもとにしたイメージ)

1. 日本の「6歳から」は、実はちょっと複雑

日本では、学校教育法により、子どもが満6歳に達した日の翌日以後、最初の学年の初めから小学校へ就学させる義務があります。[1]

多くの場合、4月に入学します。

そのため、同じ一年生でも、入学時点では6歳の子どもが中心で、誕生日によって成長の時期には幅があります。

親はつい、「もう6歳だから、これができないと」と考えがち。

でも、同じ学年という理由だけで、発達のペースまで同じになるわけではありません。

まず、ここを頭の隅に置いておきたいですね。

2. フィンランドは7歳から。でも、その前は?

教育比較でよく登場する国、フィンランド。

フィンランド教育庁の資料では、基礎教育は一般に7歳になる年に始まります。[2]

「じゃあ、6歳まではずっと遊ぶだけ?」

いいえ、そうではありません。

6歳の子どもには、就学前教育に参加する制度があり、通常は義務として位置づけられています。[3]

この段階は、学校の教科学習へ突然飛び込むためのものではなく、学びや生活、他者との関わりを支える重要な橋渡しです。

7歳から小学校だからといって、7歳になるまで何も学ばないわけではないのですね。

日本の「幼稚園・保育所等から小学校へのつながり」と照らし合わせると、数字だけでは見えない共通の課題が浮かびます。

3. フランスは3歳から教育が義務。それって早期受験?

今度はフランスへ。

フランスでは、原則として3歳から教育を受けることが義務になっています。[4]

「3歳で義務教育!? 早すぎない?」

日本の感覚では驚くかもしれません。

ただし、ここでいう3歳からの教育は、小学校の一年生を3歳から始めるという意味ではありません。

3〜5歳頃はécole maternelle(幼児学校)。

そして、6歳頃からécole élémentaire(小学校段階)のCP(準備級)へ進みます。[5]

つまり、「教育を受ける義務が始まる年齢」と「小学校段階が始まる年齢」は別のものです。

この二つを混ぜると、国際比較を大きく誤ってしまいます。

小学校へ進む道を表す挿し絵
小学校へ進む道を表す挿し絵(記事内容をもとにしたイメージ)

4. スペインの子どもは何歳から小学生になる?

スペインの法律では、小学校段階の Educación Primaria は6年間。

一般に6〜12歳に相当し、子どもは6歳になる暦年に一年目へ進むと定められています。[6]

日本とは入学時期や年齢の区切り方が違うので、「スペインの一年生は全員6歳」と言い切るのも不正確です。

そして幼児教育の3〜6歳の段階は任意ですが、公的制度では無償の教育が提供されます。[7]

スペインもまた、入学前の数年間が、子どもにとって大切な学びの期間なのです。

前回のスペイン編では、日常生活の中で自立心を育てる考え方を紹介しました。

靴を履く、気持ちを伝える、友達と関わる。

そんな経験も、小学校へ進むための土台の一部になります。

5. もう一つの落とし穴。「何歳」の数え方も国によって違う

入学年齢の比較では、6歳か7歳かという数字以外に、もう一つ注意したい点があります。

それは、どの時点でその年齢になる子を、一つの学年にまとめるのかということ。

日本の学校年度は4月に始まります。

一方、スペインの小学校は、原則として6歳になる暦年に入る仕組みです。[6]

同じ「6歳で入学」と書かれていても、子どもの誕生月によって、入学時点の年齢には違いが生まれます。

例えば、日本で春の入学式を迎える子どもと、スペインで秋に新しい学年を始める子ども。

その二人を「どちらも6歳だから同じ発達段階」と比べるのは、少し乱暴ですよね。

しかも、言葉や生活習慣、家庭で経験する活動、学校が用意する支援もそれぞれです。

だから、教育制度を海外比較するときには、学年名だけでなく、年齢の区切り、教育段階、年度の始まりを合わせて見る必要があります。

この視点を持つだけで、数字のニュースに少し強くなれそうです。

6. 4か国を並べると、少し意外なことに気づく

ここで、数字を整理してみましょう。

日本:小学校は一般に6歳から。

フィンランド:基礎教育は一般に7歳になる年から。6歳には就学前教育がある。

フランス:教育を受ける義務は3歳から。小学校段階は一般に6歳頃から。

スペイン:小学校段階は6歳になる暦年から。幼児教育の3〜6歳は任意・無償。

「あれ? 7歳からのフィンランドだけが、遅いの?」

そう簡単には言えません。

なぜなら、学校という名前、対象年齢、義務の範囲、幼児教育の内容が、国ごとに違うからです。

数字をそのまま並べても、子どもが実際に受ける教育の質や量は比べられません。

7. 早く始めれば、必ず有利になるの?

「それでも、文字や計算を早く始めた方が将来得なのでは?」

そんな疑問も浮かびます。

けれど、今回確認した制度資料だけで、入学年齢が子どもの学力を決めるとは結論できません。

学力や発達には、家庭環境、教育の質、言語環境、個人差など、さまざまな要因が関わります。

また、小学校入学までに、何を経験してきたかも大切です。

友達とのやり取り。

自分で試してみる経験。

気持ちを伝えること。

困ったときに助けを求めること。

文字や数字を学ぶ力と、これらの経験は切り離せません。

「6歳か7歳か」だけを答えにしてしまうと、むしろ幼児期の豊かさを見逃してしまうのです。

8. 入学前に「できるようにすること」は、一つじゃない

日本でも海外でも、保護者は小学校入学を前に、何か準備をしなければと感じることがあります。

文字を読めるようにしようか。

時計を教えた方がいいかな。

一人で着替えられるかな。

でも、学校の準備は、技能のチェックリストを全部埋めることだけではありません。

フィンランドの教育庁は、就学前教育について、学習のための経験や成長を大切にする制度として説明しています。[3]

そこから家庭でも考えられるのは、子どもが新しい場所へ安心して踏み出せること。

例えば、緊張したときに「ちょっと不安」と話せる。

分からなければ人に聞ける。

お友達と遊ぶ中で、自分の希望を伝えられる。

そして、好きなことに夢中になれる。

もちろん、苦手なことがある子どもにも、必要な支援を受けながら学ぶ機会があります。

入学までに完璧な一年生を作るのではなく、安心して一年生になれる準備をする。

そんな発想も持っていたいですね。

9. 入学前に家庭でできる、意外とシンプルなこと

小学校への準備というと、ひらがな練習や計算ドリルを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、本人が興味を持っていれば楽しむことはできます。

でも、毎日の暮らしにも、学びの土台はあります。

例えば、翌日の持ち物を一緒に確認する。

出かける前に、時間の見通しを話す。

「分からないときは聞いていいよ」と伝える。

そして、知らない場所や新しい友達に不安があるなら、言葉にしてもらう。

できないことを入学までにゼロにするのではなく、困ったときに支えてもらえる安心感を作る。

そんな準備も大切にしたいと思います。

明日の準備をする家族の挿し絵
明日の準備をする家族の挿し絵(記事内容をもとにしたイメージ)

10. ランドセルの中に、何を入れて送り出したい?

入学の朝。

新しい服、新しい靴、新しい道。

子どもはいつもより少し背筋を伸ばして、玄関を出ていくかもしれません。

そのとき、親が願うのはきっと「一番早く覚えてほしい」だけではないはずです。

楽しく過ごしてほしい。

友達を作ってほしい。

知らないことに出会うのを怖がらないでほしい。

フィンランド、フランス、スペイン、日本。

制度の始まりは違っても、子どもたちの学びは入学式の日に突然始まるわけではありません。

子どもの学びは、学校の扉をくぐる前から、すでに始まっている。

そう思うと、今日の遊びや何気ない会話も、少し頼もしく見えてきますね。🌸

次回予告 🧩

積み木が崩れた。パズルも完成しない。

そんなとき、「頑張ったね!」だけでいいの? 次回は失敗と声かけを、スペインとアメリカの資料から考えます。

この記事の調査資料・参考文献

[1] 文部科学省 『小・中学校等への就学について』 公式原文

[2] Finnish National Agency for Education Primary and lower secondary education. 英語公式資料

[3] Opetushallitus Esiopetus lapsen oikeutena. フィンランド語原文

[4] Ministère de l’Éducation nationale L’inscription à l’école maternelle. フランス語原文

[5] Ministère de l’Éducation nationale L’école élémentaire. フランス語原文

[6] Boletín Oficial del Estado Real Decreto 157/2022, Educación Primaria. スペイン語法令

[7] Boletín Oficial del Estado Real Decreto 95/2022, Educación Infantil. スペイン語法令

※就学年齢は一般的な制度を説明しています。例外的な進学・就学措置や地域差があります。挿し絵はイメージです。

企画・編集:株式会社フォーユアオール
本記事は公開資料をもとにした読み物です。参考資料は上記をご参照ください。